食に関わる人の想いを一皿に。料理人の枠を越えるエンターテイナー【川嶋亨さん】

「料理人は天職。人を喜ばすことが好きでそれが原動力。」と語る川嶋さん。てみるフェスなどのイベントを通して様々な挑戦を続け、次々とアクションしていらっしゃり、ご自身のお店を一本杉通りにオープン予定。「里山里海に囲まれ、豊かな資源であふれる能登を、美食のまちを越え、世界都市にしたい」と食・能登の未来を見ている川嶋さんの熱い想い、今後の夢について伺いました。

☑ 基本情報(プロフィール)
【お名前】川嶋亨さん
【ご出身】石川県七尾市

石川県七尾市和倉町出身。大阪の辻調理師専門学校を卒業して、大阪・京都で計13年間、ミシュラン星付きの日本料理店にて修行。卒業して7年目の28歳の時、食の都・大阪グランプリに出場し、大阪のプロの料理人約300人が競う中、3度目の挑戦で総合グランプリに選ばれる。昨年2018年に35歳以下の日本最大級の若手料理人のコンペティション「RED U-35」にて567名のうちファイナリストとなりゴールドエッグを獲得。能登が世界農業遺産に認定されたことを契機に、2016年に故郷である七尾市にUターン、和倉温泉のと楽にて割烹宵待の料理長を3年務める。2020年1月に、七尾市の一本杉通り商店街の有形文化財の建物を活用した日本料理店をオープン予定。

☑どうして、厳しい修行や高度なスキルを必要とする料理人の道を歩まれたのでしょうか。

父親が同じ日本料理の仕事をしていたので、その影響があるのかもしれないです。でも父からは「料理をしなさい」と言われたことは一切なかったんですよ。物心ついた頃から、人を喜ばすこととか、モノづくりが好きだったみたいですね。大変な仕事だけど「料理人になって良かったな、自分の天職だな」って今になって思います。

-自分の仕事を天職と言い切れる人は多くないと思います。どうしてご自身にとって料理人は、”天職”であると思われるのでしょうか。

何より楽しいですし、やりがいを感じているからでしょうね。喜んでもらえてるというのが実感として分かります。3年前(2016年)にUターンしてから、地域づくりやまちづくりに関われる職と気づいて、本当に素晴らしい職じゃないかなと思いました。大阪や京都での修行中は、気づく機会がなかったです。

☑ 以前は京都・大阪の一流店で修行されていたと思うのですが、なぜ能登にUターンされたのですか?

2011年に能登里山里海が世界農業遺産に認定されたことがきっかけです。その頃って自分は大阪でバリバリ修行・仕事している時期で、コンテストに出て大阪で一番になったりと勢いのある時期でした。店も大阪で出そうかなと思っていました。

-大阪の人になる予定だったのですね。

でもちょうどその時に、能登が世界農業遺産に認定されました。「これから能登ってすごいところになっていくんやろな、世界から人が押し寄せるんだろうな」と思っていました。しかし、それが2年経ち、5年経ち、、軌道に乗っていかない様子を見て、何かモヤモヤしてたんですよね。モヤモヤを抱えながらも、でも自分は大阪の地で商売しようとしてて、本当にこれでいいのかなと考えた。その時に妻に相談して、「気になるなら一回能登に帰ってみたらいいんじゃないの。」って背中を押してもらって、帰って来たのが3年前です。

-なるほど。能登が世界農業遺産に認定されたことがきっかけで、ずっと能登のことが気になっていらっしゃったのですね。

☑ 「料理人はまちづくりに関われる職」と仰っていましたが、料理人は地域にとって、どんな役割を担っているのでしょうか。

「食・料理人」っていうのは地域の一つのパーツ。すべての人が一体になって、それぞれの力を発揮したときに地域って動くと思うんです。自分は何かをプロデュースするとかは出来ないかもしれないですけど、食に対してはプロフェッショナルなので、食の分野で使命を果たせると思っています。お客様に直接価値をお届けする役割が自分っていうだけなんすよね。関わってきた人たちの想いだとか背景を伝えるのが僕の仕事だと思っています。

【能登の海の幸、山の幸の詰まった、たくさんの方々の食材と想いの詰まった一皿。八寸】
【中島菜とズワイカニ 能登の冬の山の幸:海の幸、生産者が一生懸命に作った素晴らしい美味しい食材だからこそ、シンプルに】

☑ 修行していた当時といま、何か変わったことはありますか。

都会にいた時は、自分の腕自慢してたと思うんですよ。けど能登に帰ってきて3年ちょっと経って、料理は自分の腕自慢じゃなくて、「いかに生産者とか自分の後ろの背景にいる人達にスポットを当てられるか」、そっちのほうが大事だと思うようになりました。だから自分は、輝かなくていいんですよね。いつも僕は取材の人に言うんです。自分にスポット当てなくていいから生産者や働いている仲間に当ててくださいって。

【生産者の方とのお写真】

-確かに、別の記事や特集で、生産者の方々や裏で携わっている方々に焦点を当てた内容が多く見受けられました。

料理人ってね、望んでいなくてもスポットが当たるんですよ。だから取材の時も自分のことを話すよりか、生産者のことを話す方がいいと思っています。それが絶対地域の底上げになる。生産者の方々って取材されると、よりモチベーションが上がると思うんですよね。そうやって地域の人たちを巻き込んでいっているんです。また、周囲を巻き込んでいくうちに、自然と理解者で繋がっていき、一人では動かせないことも動き始めるようになると思うんです。

-なるほど。生産者の方々にもスポットを当てて、皆さんで覚悟を持ってお客様に価値を届けていらっしゃるのですね。

それが僕のやりがいです。自分一人じゃないんです。たくさんの人と一緒につくっていっているって感覚ですよね。