まちの挑戦を後押しするために、”市民大学”はどうあるべきか【高橋正浩×太田殖之×森山奈美】

株式会社御祓川の事業の3本柱である、まち育て(御祓川大学)・みせ育て(能登スタイルストア)・ひと育て(能登留学・能登の人事部)それぞれの事業で関わるパートナーの方々と株式会社御祓川社長 森山奈美の鼎談企画。

これまでの取り組みと七尾のまちづくりの歩みを振り返りながら、今後のまちづくりのあり方、まちづくり会社としての役割を考え、未来に繋げていきます。

今回の鼎談は、”まち育て”の視点から、”御祓川大学”立ち上げの頃から関わってくださっている【「進学塾GRIP 代表」高橋正浩さん、「七尾街づくりセンター(株)」太田殖之さん】にお話を伺いました。

【株式会社御祓川とのご関係】

御祓川を陰に日向に支えてくださっている高橋さんと太田さん。お二人とも、まちづくり大学設立準備委員会の頃から関わってくださり、御祓川大学の運営委員として、強力にサポートしてくださっています。

【プロフィール】

●高橋正浩(進学塾GRIP 代表)

石川県七尾市(旧能登島町)生まれ。45歳。慶應義塾大学環境情報学部卒業。卒業後に宮大工見習い、家庭教師を経て学習塾運営会社を2005年に設立。七尾市まちづくり基本条例の制定に市民委員として参画。

条例の理念を実践するための仕組みとして地域づくり協議会の機能強化が必要であると感じ、その実現のために立候補!七尾市議会議員、石川県議会議員を経てただいま政治家浪人中。今春より塾名を志工房からGRIPへと変更し、政治家×塾人=面白人間として自身のバージョンアップのために学びの毎日。自称、御祓川シニアサポーター。

太田殖之(七尾街づくりセンター(株)移住コンシェルジュ)

デザイナーを経て、地域づくりの世界へ。人材育成、コミュニティビジネス等の創業支援、拠点づくりなど地域活性化全般に関わる。2014年、妻の実家がある石川県七尾市へ移住。(一社)能登定住・交流機構の事務局長として能登地域の移住支援・雇用創出に取り組む。

2017年、移住者3名と七尾市地域の活性化を目的に株式会社おやゆびカンパニーを設立。活動の第一弾として七尾市高階地区に古民家体験型カフェろくでなし&ゲストハウスB&B45を開業する一方で、同年10月より、七尾市の移住コンシェルジュに。都市部からの移住希望者の支援に取り組んでいる。

【議会議員経験者×移住コンシェルジュ×まちづくり会社 社長】

七尾のまちづくりに様々な角度から関わっている3名の鼎談が実現!
「学び」「まちづくり」「自治組織のあり方」「まちづくり会社の役割」とは?
設立4周年の御祓川大学、チャレンジを生んできたこれまでの歩みを振り返り、今後はどのような場として活用し、まち育てに繋げていくのかについて議論しました。

株式会社御祓川の三本柱の事業「まち・みせ・ひと育て」とは?

森山:まず、話に入る前にお二人に論点を上げていただくところから入りたいと思います!

高橋:株式会社御祓川の事業として「まち・みせ・ひと育て」がありますね。その中の”まち育て”って、”みせ育て”と”ひと育て”に比べると、対象が抽象的というか、凄く広いじゃないですか。

森山:はい。

高橋:「みせ・ひとを育てる」ということは、”どの店”とか、”誰”のように言い換えられるからイメ―ジがあって分かりやすい。けれども「まち育て」って、それに比べると範囲が広い。株式会社御祓川が指す「まち育て」という言葉は、何をどの状態にしたいことなのか最初に聞いておきたいなと。

森山:最初の株式会社御祓川設立時のビジョンは、御祓川(七尾市を流れる二級河川)の再生でした。

高橋:川だったんだね。まち=川?

森山:そうですね。まち育ての事業として、川の浄化に取り組んでいました。まちの中にある明らかな課題(御祓川の汚染)に対して、見過ごさずに活動を起こしていくこと。地域の中にある課題を自分事として解決していくことの象徴が御祓川でした。それが、2007年の能登半島地震後には、「うまみん」がまち育てとして繋がっていきました。今は、それがてみるフェスに移行している感じですね。

※うまみん(能登旨美オンパクうまみん)
地域の資源を生かした体験プログラムを実施している。
【http://www.umamin.net/】

※てみるフェス
能登半島・七尾で行われる大文化祭! 地域を元気にするために、やってみる企画を一堂に集めたフェス。会期中に、まちの様々な場所で楽しいイベントを開催。居場所を作ってみる、移住者で交流してみる、年代別で集まってみる、ライターの勉強をしてみる、イベントの作り方をしてみるなど、みんなの「やってみる」を応援する企画。

森山:だから、何をどの状態にしたいかと問われれば「地域の人達が、まちの課題に対して、動き出せるような状態を作ること。」だと思います。結果、働きかけるのは”人”なんですよね。最初は「まち、みせ、ひと」って並列に、同じ大きさの輪っかで描いていました。でも今のアプローチは、同心円状のような感じ。人に働きかけることによって、店を良くしていく人、まちを良くしていく人も育っていくという考えですね。

【株式会社御祓川のビジョンのイメージ図】

高橋:その”まち”の範囲って、人それぞれだよね。自分の在所のことを思ってる人もいれば、能登全体、商店街のことを思ってる人もいる。

森山:そうそう。この同心円状の絵が、一昨年くらいに経営計画書に登場しました。

太田:具体的にやってるまち育ての事業って何?

森山:御祓川大学ですね。

御祓川大学が”まち育て”の拠点としてあり続けるためには

森山:お二人とも、御祓川大学立ち上げの頃から関わってくださっているので、「もっとこうした方が良いよ!」ということとか、御祓川大学に対する意見を聞きたいです!

高橋:そうですね。僕は、まち育てという分野には、まちの活性化とか色んな言い方があると思うんですけど、自分が個人として取り組んできた活動(政治家としてのまちづくり)が、株式会社御祓川や御祓川大学の事業とリンクして、結果的に、そこに時間的、金銭的コストをかけていると思っています。僕にとってここ(御祓川大学)に来ることはタダじゃない。だからこそ、よく学ぶことができた面があったと思ってます。

森山:うんうん。高橋さんは御祓川大学で何を学べましたか?

高橋:やっぱり、一番最初の能登七尾義塾の時だね。七尾義塾の講座の当初は僕も議員を始めた頃で、「七尾を良くしたい。」とみんな思っているんだと感じました。

※能登七尾義塾
能登の明日を見据えて、講義と対話によって、七尾のこと、政策のこと、人材育成のことなどを学ぶ対話の場。高橋さんが塾長、御祓川大学bancoで開講している講座。

高橋:「七尾を良くしたい。」とみんな思ってるんだけど、問題はその射程なんだよね。自分が良くしたいと思う範囲が半径5mや10mの人もいる。それって、自分の家くらいの距離で考えている人もいるし、半径1kmの在所の話をしている人もいる。半径20km、30kmの七尾市を指してる人もいる。色んな方がいらっしゃると思うんですけど、自分がどこを指していて、そのためにはどんなことを考えていかなければいけないのかを、まず考える必要がある。その問いを、それぞれの人に考えてもらう場所があるようでない。みんな七尾を想ってはいるけど、学びを通じてしかオーソライズされていかないし、オーソライズされた活動しか、持続的かつ有効なものにならないと僕は思い始めてきています。

森山:たしかに。”自分がどこの責任を負うのか”という範囲はありますよね。自分の所を良くしようとすると、もっと上のレイヤーのことが気になってくる。「どうして、うちの店は儲からないのか?」「どうして、うちのまちは元気な状況になれていないのか?」その原因が中に問題がある場合もあるし、外にあるときもある。それをどうすればいいのか考える必要がありますね。

高橋:それで、勉強するっていうと、「理屈ばっかり」とか、「頭でっかち」とか言われたりする。けれど実際は、経験から学べることだけで本質的な課題を打開するのは難しいんじゃないかな。読書や勉強からの学びは、経験から学べるわけじゃない。

森山:そうですね。

高橋:自分の経験なんて、思ってるほど学びの量はないと思う。例えば、会社で言うと、チームリーダーや課長までは経験で学べるのかもしれない。でも、部長や経営者には、経験からの学びだけじゃやっていけないのと同じ。

森山:やっぱ本読まなきゃダメだと思うよね。

高橋:そうそう。あと、経験の総和も良くないと思う。経験を持ちよって、ワークショップをしたところから出てくる学びも、主観的すぎるから怪しいと思う(笑)。だから、そうではない学びをまちに作らないとと思った。

森山:それで、七尾義塾?

高橋:そう、だから七尾義塾って僕は言い始めた。ただ、僕が個人的に知識が足りてないことがあったり、勉強したい部分があったからもあるけど。振り返ってみると、やっぱり、僕も議員として、足りてない学びを補う場所として、御祓川は非常に有益な場所だったと思う。だからこそ、自分がかけたコストに比例して、得るものが大きかった。それが一つの気づきですね。

森山:そうですね、勉強する時はコストをかける必要がありますよね。太田さんにも、御祓川大学の立ち上げの時からお世話になっていますが、御祓川大学をどう思っていますか?

太田:「七尾を何とかしたい。」っていう人がたくさんいた時に、「御祓川大学があるよ。」って言っても、その人たちからすると、自分がまずは何を学んだらいいか分からないということがあるんですよね。

森山:はあ、なるほど。

太田:「こうしたい!」っていうのはあるんだけど、誰に聞いたらいいとか、何を学んでいけばいいかというのが分からないところがある。そこを、御祓川大学で、何を具体的に学べばいいかとか、こういう人と繋がれればいいんだなというのが、分かるようなコンテンツがあったらいいのかなと思います。

森山:うんうん。入り口になるようなね。

太田:御祓川大学立ち上げの時から僕がやらせてもらってるのは、移住者の交流会「イジュトーーク」。移住してきた人全員がそこに参加するわけではないけれども、これまでたくさんの方々に来て頂いています。七尾ってこんなところがあるんだっていうこととか、僕らが何でこの交流会を続けているのかみたいなところを、来た人たちに知ってもらう機会は大事かなと思っています。

※イジュトーーク
七尾・能登への移住者が毎月1回集まり、ゲスト移住者の話を聞いたり、悩み相談、これからしてみたいことまで、思いを共有する移住者同士の交流イベント。
【日時】毎月第2または第3木曜日開催 19:30~21:00(終了後に懇親会あり)
【場所】御祓川大学メインキャンパスbanco

森山:そうやねえ。

太田:実際に、あのコミュニティから店を立ち上げる人が出てきたり、「こんなことしたい!」ってイベントやる人が出てきたりとかもしていて。ここ(御祓川大学)に来て、きっかけを掴んでもらってるというのが、御祓川大学のまち育てとしての、機能の一つなのかなと思います。

森山:毎回、私の知らない人たちがbancoにやってくるのがすごいです。イジュトーークがあることで、七尾への移住を決めた人もいますもんね。

”経験から学べることには限界がある”、自治組織に必要なことは? 

高橋:僕がここで議論したいことで、経験から学べることには限界があるということですね。強調して言いたい。

森山:強調して言いたい!

高橋:まさに僕らみたいに40代半ばになると、経験から学べる限界が前に立ちはだかってくる。じゃあどうするのかという時に、読書したり、知識を得られる講義を受けたり、実際に現場に行って見てみるというような、自らが能動的に行動して獲得した知識がないと次のステップにいけないね。それは議員も同じ。やっぱり、経験から学べることの限界を突破する学びを獲得していく必要があるなと。

森山:そうですね。あと、若い人たちから学ぶことも多いよね。

太田:その経験による学びの限界の話って、かつての地域づくり協議会の話とまさに似ていると思う。「今まではこうやってたから・・・」という経験に頼ろうとすると、これからの時代の自治をつくっていけないんだよね。

高橋:そうそう。能登島地域づくり協議会や、高階地域づくり協議会は組織としてうまくいっている。それは、もともと能力のある主体やプレーヤーがいて、その人たちが不満を持たずに、まちのために一肌脱ごうという気持ちをいかに醸成して、オーソライズしていくかの運営体制ができているから。長をやってきた人たちの経験値だけに頼っては、足りないことも出てきますよね。

太田:”今までがどうだったか”じゃなくて、”これからどうしていきたいか”を上に立つ人が意識する必要がありますよね。能登島も高階も、地域おこし協力隊や若者、女性、他所から来た人、Uターンして戻ってきた人など、地域内にはない経験を持った人も参加して活躍できる場になっている。いろいろな経験や意見を吸収して学ぼうとする柔軟な体制がありますね。

高橋:その運営体制を保っていく上で、みなさんにうまく納得させる技術と理屈が必要なんですよね。それがある自治組織はうまくいく。それがないところは中々うまくいかなくて、だんだん権威や権力の話になってしまって立ち行かない。

太田:そうそう。そういうところに僕らが関わって、何か出来たらいいなと思いますね。

高橋:僕らは、必要な人材を呼んできたり、調整のサポートをしたりして、組織に合った組織づくりというのを勉強して見てきていますよね。合意形成しやすいシステムや、しにくいシステムがあったりね。もちろん、人となりもあるんだけど、やっぱりシステムも必要で、それも経験していけばいいんだけど、10年とか時間がかかるからね(笑)。

森山:そうそう(笑)。

高橋:成功事例を参考にすれば早く解決するのに、自分の経験から行こうとすると、すごい時間がかかる。だから、知恵袋が機能しているところはどんどん上手くいくし、そうなることで次はその組織に色んな人が関わってくれる。

森山:いや、早く解決するってことはない(笑)。事例の上っ面だけ真似しても、本質を学んでなければ、良い仕組みにはならない。

高橋:結局、地域おこし協力隊が活躍できて定着しやすいところと、そうでないところの話と一緒。何が違うっていったら、地域自治のシステムがうまく回っているかどうかのところ。

森山:そうだね。さっきの話で、組織の中で合意形成が出来ているとか、組織論でちゃんと物事が進んでいることで、地域自治がうまくいっている所と、地域おこし協力隊が入って定着することの共通点は何ですか?

高橋:僕は、組織の意見集約のために、まず広く意見を聞き、合意形成のために譲歩し合えるような組織づくりができるかどうかだと思う。あと、誰にどんな役割を任せるのが適切かが分かっているかというところ。地域おこし協力隊も、地域自治のための重要なパズルのピースなわけで。だから、そこでうまくパズルをはめていける画を描ける人がいて、それが

収まってうまくいけば、本人(協力隊)の満足度も高いし、力も発揮できるでしょ。

森山:土壌があってこそ、人は育つということですね。

高橋:でも全然違うところにはめると、上手に力を発揮させてあげられない。長(おさ)次第のところもあるけど、ふさわしい人が長になれるような舞台回しができる人がいるかどうかと、その長を誰にするかの見極めも組織の中で出来ないとダメだと思うんですよね。

森山:舞台回しかぁ。事務局長的な人ですよね。大事、大事。

御祓川大学の意義、御祓川のファンづくりが”まち育て”に繋がる

森山:御祓川大学で勉強する意義って何だと思いますか?

高橋:御祓川大学で問いを考えたり、勉強した結果、自分の経験で導き出した解が怪しいとか、自分の知識だけでは意外と通用しない場面があるということにも気づけるということだと思います。そこを学び直し、課題を解決していくために能登の人事部、インターンシップ(能登留学)、企業改革が機能していくことが本質的かと。例えばだけど、買い物で商品(サービス)の選び方を学ぶということもそうだと思う。どうせ買うなら、「ここで買った方がまちのためになる」っていうのが分かるかどうか。その気づきを広められるところが御祓川大学の意義だと思うんですよね。

※能登の人事部
地域(能登)に根づいた仕事が掲載されているWEB求人サイト。
移住を検討している方や能登でキャリアチェンジを検討されている方のサポートをしている。新卒のキャリア設計、兼業人材の新しい働き方、UIターン者の移住支援など、求人の「周辺」にある事柄をサポートしている。
【https://noto.work/】

※能登留学
長期実践型インターンシップ:就職、採用を目的にしたインターンシップとは異なり、中小企業、能登の場合は集落も含めて、経営革新や課題解決を目的にしたインターンシップ。期間は1か月~6か月と長期。学生がプロジェクトの担当者として、インターンに挑戦するプログラム。
【能登留学ホームページ:https://notoryugaku.net/】

森山:うん。学びのしくみが変わってきているな、と思うんです。かつては、知識を得るということが学びのイメージだったけど、いまは自分や他人の経験をどのように意味づけて、気づくことができるか。違いから学ぶというか、違和感から学ぶというか。アウトプットしないと、学びにならないんだよね。

高橋:大きく言うと、そういう御祓川のサービスの価値に気づいてもらうためのファンづくりが必要だと思うんです。御祓川のファンやサポーターが増えれば、御祓川のサービスを通じてまち育てが推進できる。御祓川のファンになるということは、まちを良くするために投資ができる人になるということなんですよ。

森山:そういうことですね。

太田:うん。

高橋:あるいは、企業の生業とまちづくりがリンクできる会社、その経営者を育てていくっていうことだね。

森山:そうですね。それが”まちとひと”、”みせとまち”の関係を正常化するというところだと思います。

高橋:そういうこと。店や店育てのサービスの価値を理解してもらうための場所が御祓川大学。イジュトーークとか、プログラミング教室とか他の機会も大事なんだけれども、御祓川大学の中のコンテンツづくりの中で、一番重要視しなければいけないのが、間口の広さだけでなく、奥行き。深くなればなるほど、御祓川のサービスを通じて、まち育てに貢献する人材が育っていくから。

太田:でも、全員が奥まで到達する訳じゃないですからね。

森山:そうですね。これからどうすればもっと御祓川大学が良くなっていくと思いますか?

太田:まちづくりっていうと、大きなイメージで捉えられてしまって、「自分とはあまり関係ないんじゃないか。」と感じる人もいると思う。でも実際に、いろんな方と話してみると、「もっとこうしたいとか、こうなったらいいのに。」という意見を持っていたりしますよね。その想いを受け入れて、次のステップへの入り口になれるようなコンテンツがもっとあると奥に繋がるかなと思います。あとは、入り口となるコンテンツが常に開かれていることが重要。だから、「イジュトーーク」は、毎月定期開催にしています。毎月決まった日にやっていれば、それぞれのタイミングで参加しやすくなるので。

森山:なるほど。

高橋:今は、サービスがうまく横に繋げられていないというか、プログラミング教室が良かったから、次は別の講座を受けてみようとしても選択肢がない。T字型構造のような感じでだんだんと御祓川への関与が深まっていって、、深みにハマればハマるほど、御祓川のファンになってもらえるような構図になるといいよね。

太田:奥行きを出していくことは大事ですよね。勇気を出して御祓川大学の講座に参加された方の満足感って高いと思うんですよ。でも、その次に何をしたら良いかのデザインができていない。そこのデザインを、今後やりたいですよね。

森山:がんばります!いや、一緒にがんばりましょう!

まちづくり会社として、株式会社御祓川の今後の役割とは

森山:まちに必要な機能や、株式会社御祓川の役割とは何だと思いますか?今後に向けてアドバイスを下さい!

高橋:僕が思うのは、みんな全員が七尾を良くしたいということに対して、「そうだね。」って言うけれど、そこまでしかみんな一緒じゃないと思うんです。地域で活躍する人材育成を考えていく上で、重要な視点になると思うのが、”中小企業の挑戦が地域の未来をつくる”ということと、”起業人材を育てる”ことが重要かと。

森山:そうですね。

高橋:だから、株式会社御祓川におけるひと育ての側面でのミッションは、社員教育や、起業人材・経済人を育てていく方向性だと思うんです。「経済」というのは、まちの中でとても重要なキーワード。例えば、まちの中で稼ぎ手を増やしていく。お店で働く人、その稼ぎ手が定着し、そこで暮らし、その人たちがまちを担うという循環を求めていくことが重要だと思う。だから、まち育てと人育ては、同じ人材教育でも、御祓川としてはまた別のアプローチになっていると思う。

森山:確かに、「能登の人事部」を名乗り始めて、少しずつ企業研修のお仕事をいただくようになったんですけど、まさに「企業は人なり」を実感する日々です。社員がいかに、会社のことや地域のことを考えながら、当事者意識をもって行動できるかどうかが、その組織の強さを決める。そして、経営者が成長しようとしているかどうかが、将来性を決める。

高橋:その中で、御祓川のまち育ての方法は、御祓川大学の運営ですよね。イジュトーークも、まちや御祓川に関わる入口の政策としてすごく機能するけど、いまの御祓川の仕組みの中で、次のステップを踏もうとしても他の選択肢がない。それは本人に委ねられているところがあると思っていて、「やりたい人がやりたいことをやればいい。」というアプローチでは次のステップが遠いんですよね。

太田:「次にどうしたら良いのか?」とか「こんなことをやってみたいんだけど」っていうことを、個人的にいろいろと相談を受けますね。もっと深く関わりたいと思っている人はいるので、そんな方たちが関われる選択肢や次のステップを用意する必要があると思いますね。

高橋:その人たちが最終的に、何か講座を開くとか、自分のノウハウをみんなに伝える場をつくれるような、主体的なプレーヤーになったら、ほぼ一区切りのところまできているよね。

森山:そうだね。もうちょっと、ステップアップのステップを細かくしたほうがいいのかもね。いしかわ地域づくり塾とかが、自分の思いを形にしていく場ですね。

※いしかわ地域づくり塾
いしかわ地域づくり協会が主催するまちづくりの担い手を育成する塾。御祓川大学で実施していた「七尾マイプラン塾」をモデルとしており、一人ひとりが、感じているまちの課題解決や自分のテーマに応じてやってみたいことを「マイプラン」としてまとめる。主任講師は、森山奈美。実は、御祓川大学のプログラミング教室は、いしかわ地域づくり塾で作ったプランを塾生が実現する形でスタートしたものである。

高橋:だから、経験プラス学びのところを御祓川大学がうまく仕掛けていくことで、御祓川のサービスの価値に気づく機会となり、そのサービスが利用されることで、会社にフィードバックされて、まちも御祓川も育つ。そのまち育ての循環のエンジンをかけていくのが御祓川大学だと思う。

森山:なるほど。すごい!(笑)。

高橋:やっぱり株式会社御祓川のファンを増やしていくことが、しいてはまち育て、株式会社御祓川育てに繋がっていく。御祓川大学のような、学びの場所が機能しないまちに、未来はないと思います。

森山:最初は、「世界に通用するような商品やサービスを生み出せるまち」として掲げていたビジョンが、徐々に「”ひとりひとりの世界観を実現できる”という意味での小さな世界都市」になってきていると感じています。それはやっぱり、自分の人生に価値や意味を見いだせるかどうかが鍵。それは、経験を意味づけることだし、これまで学んだことを手放すことでもある。だからこそ、「哲学」と「技術」と「実践」のサイクルがすごく大切だと思いました!

高橋:僕ら40歳後半からの学びも大事だね(笑)

森山:アラフィフだね!(笑)

高橋太田森山:(笑)

森山:今日はお二人ともありがとうございました。今後とも御祓川大学をよろしくお願いします!

編集後記

今回は、対談記事ではなく、初の鼎談記事をお送りしました。冒頭に、お二人に論点を上げていただくところから鼎談が始まりました。高橋さん、太田さんのお話から、御祓川大学がまちにとって、「主体的にまちに関わる人材を育成、まちづくりに必要なマインドを育てる役割」を果たしていることが見えました。また、経験から学ぶだけでなく、知識を自ら能動的に獲得しに行き、先行事例を加味した上で、課題を解決していく重要性についても掘り下げ、「学びとは何か?」、「自治組織のあるべき体制」について再考する場となりました。時代の変化とともに、御祓川大学のニーズや役割も変遷していくことが考えられます。今後とも、お二人の知恵をお借りしながら、御祓川大学がまち育ての拠点であり続けられるよう邁進して参ります。